ロエベ財団 クラフトプライズ 2023 受賞者
ニューヨークで行われた選考の結果、クラフトプライズの審査員は本年度の大賞として、稲崎栄利子による「Metanoia」を選出しました。稲崎氏の複雑な陶磁器による造形物は、極小のパーツを集積することで結晶化した表面を生み出しました。審査員からは、「陶磁器でさまざまなエレメントから相乗効果を生み出すという、これまで見たこともないような卓越した技術である」と評価されました。この作品の傑出した技術と芸術性は、展示空間を支配し、驚きを与える魅惑的な存在感を生み出しています。
審査員はさらに2つの特別賞を発表しています。1つめの特別賞は渡部萌の「Transfer Surface」です。胡桃の木の皮でできた箱は、季節の循環に敬意を表し、日本古来の伝統である生け花を想起させます。審査員は、樹皮の素材感の素晴らしさと、建築の構造や修理の伝統に着想を得たリベットの使用で、この作品を選びました。
2つめの特別賞は、「The Watchers」を制作したドミニク・ジンクペです。そびえ立つ複雑で繊細な壁の彫刻は木材による個別のピースで作り上げられています。小さなイベジ(ヨルバ語で双子の意味)人形を組み合わせており、ヨルバの伝統的な信仰である多産を連想させます。審査員は、伝統的な信仰を彫刻的に再解釈し、現代のクラフトのあり方を拡張している点を評価し、この作品を選びました。